頭のケガについて
頭をぶつけた時にできるけがを総称して、「頭部外傷」といいます。頭部外傷は、皮下血腫(いわゆるたんこぶ)や皮膚の切り傷、頭蓋骨の骨折、脳のけが(脳挫傷や硬膜下血腫、くも膜下出血など)の大きく3種類に分けられますが、これらが単独で生じることもあれば合わさって生じることもあります。
したがいまして、よく「たんこぶが出たら心配ない」とか「皮膚が切れれば中は大丈夫」などと言う方がおりますが、これらは全く根拠がありません。むしろそう思って様子を見ていたら、時間が経過して頭蓋内出血が進むなどということがありますので注意が必要です。
頭部外傷の種類
皮膚の外傷
最も身近な頭部外傷として、たんこぶ(皮下血腫といいます)が挙げられます。打撲部位の皮膚の中に出血するもので、普通は自然に治ります。一方皮膚が深く裂けている場合には(頭部裂創あるいは切創といいます)縫合する必要があります。頭の皮膚は血流が良いことと、突っ張っている特性から出血しやすいのです。出血量が多く、止まり難い場合には受診してください。
頭蓋骨の外傷
皮膚や筋肉の下には頭蓋骨があります。強い力が加わると丈夫な頭蓋骨も折れてしまいます。これが頭蓋骨骨折です。ひび割れ線が入る程度の骨折(線状骨折)から、複雑に頭蓋骨が割れて、さらには頭の内側にめり込んでしまうような骨折(陥没骨折)もあります。複雑な骨折、陥没骨折は手術が必要になる場合があります。
脳の外傷
頭蓋骨の下には硬膜と呼ばれる非常にしっかりとした硬く白い膜があり、脳を包み保護しています。本当に怖いのはその下に存在する脳に影響が及ぶような外傷です。これを頭蓋内損傷といいます。特に、交通事故や高い所からの転落事故など、頭部に大きな力が加わる場合には、重症頭蓋内損傷を来すことが多くなります。このような場合を高エネルギー外傷といい、頭以外の外傷(胸、おなか、手足など)を伴うことも多く、一見元気そうに見えたとしても注意が必要です。
頭蓋内損傷の種類
脳挫傷
脳に大きな力が加わり、脳が崩れ、出血を起こすことがあります。脳が崩れることを脳挫傷、出血した場合を脳挫傷性血腫と呼びます。脳挫傷は力が加わった部分の全く反対側(例えば前頭部をぶつけた場合には後頭部)に生じることもあります。
急性硬膜外血腫
頭蓋骨と硬膜の間の出血で、多くの場合、激しく頭部を打撲した後にその部の頭蓋骨が骨折し、頭蓋骨に接している硬膜上の血管が損傷して発生します。
急性硬膜下血腫
脳と硬膜の間の出血で、脳の表面の血管の損傷が原因となることが多く、脳そのものの損傷(脳挫傷)を伴うこともあります。
慢性硬膜下血腫
外傷後1〜2ヶ月かけて脳と硬膜の間に出血するもので、出血で脳が圧迫されることにより症状が出ます。軽度の外傷の後に起こることが多いのですが、けがをした覚えが無いのに起こることもあります。飲酒歴のある方に多く、大半は60歳以上の方で男性に多く起こります。
診察・診断方法
擦り傷や切り傷があれば、それらに対して消毒や縫合処置を施した後、CT検査やMRI検査を行って診断を確定していきます。
高齢者の方など慢性硬膜下血腫やその他の疾患への進展が予想される場合には後日再検査を行う場合もあります。